選んだあなたに

選んだあなたに

どこからか懐かしい音楽が流れてきて、

それはきっと再会を果たしたふたりを祝福するように。

華々しく見えた世の儚さ、無常を味わってきたふたつの魂は今、喜びの中で咲き誇る。

「何も変わらないとお思いだったでしょうか、あなたの選択ひとつで変わったのです。その小さな一滴が大きな大河の源として創り出すこの世を」

「ふふ。なんとことだか」

「おや?あなたもとっくの昔に気づいていると思っていましたが……私の思い違いでしたかね。それは残念です。ふふ……」

彼はひとつも残念そうにはしておらず、ただ千珠を嬉しそうに見つめているだけだ。

「でも。今こうしていられるのは私の選択だけじゃないわ。きっと磨いてきた過去の魂たちのおかげね」

「そうでしょうとも。私はそれが言いたかった」

「あなたは言い方がまわりくどいのよ。だから誤解を招くことも多いのでは?」

「はは、ならば、もっと分かりやすく伝えられるように努力致しましょう、あなたのためならば」

「みんなのために、ね。どこまでも不器用な方」

千珠は日々、彼、千風を見て思う。

普段はお茶らけているのに、ふとした時に見せる視線。

饒舌な男が一瞬黙って真剣な表情を見せることが。

それこそ、彼女の心を掴んで離さないということに、今はまだ全くと言っていいほど彼は気づかないのだ。

だから彼女を喜ばせる。笑わせる。いつだってそうしなければ、離れていってしまうかもと。

不要な心配を心の奥でしているのかもと、千珠は無意識に感じつつ、

そんな彼に、惹かれていると、素直に口に出せるほど、

千珠もまだ心が成熟しきっていない。

「さあ先人たちに祝杯をささげましょう。我々の喜びが彼らの喜びだと、今こそ知るべき時です」

「でも、それは。過去に結ばれなかった者たちに悪い気がするわ」

「なんと。そんなことを感じてはいけませんね。叶わなかったからこそ、我々に叶えてほしいと願う。それを罪悪感で見えなくしまってはそれこそ罰当たりです。幸せになる覚悟をどうかこの手に」

彼はそう言い切って、彼女の袖を包んだ。

千珠は、慎重な気持ちで少し考えたのち、小さく頷き返し。

その手を袖の中で握り返したのが答えだった。

選んだあなたに 一夜限りにしたくない