
なくした小さな、だけどとても大切なものを、なくなったのだとどうか嘆かないで
きっとあなたたちの傍にいる。
これは気休めなんかじゃない。
その思い出は消えたりなんかしない。
どうか、恨みと憎しみで、その言葉を埋めつくさないで。
彼女はそれを望んではいないはずだから。
大好きなあなたたちの今を、もっと楽しく過ごしてほしいはずだから。
「閉じこもってないで、外に出ようよ」
誘われるままに手を引かれ、私は驚くあまりよたよたと頼りなく歩きはじめる。
少女は解放感に満ち溢れた顔を見せて笑う。
「ほら、風が気持ちいいでしょ。それに暗いとこに閉じこもってばかりじゃ、明るさが苦手になってしまうのよ」
少女の言うことはもっともである。私もそれを痛感していた。夜に作業するとどうにも目が冴えない。
「君はどうして私の傍らにいるの?」
「いちゃいけない?」
「いいえ、私は嬉しいけど、、あなたにはもっと傍にいてほしいって願っている者がいると思って」
「私も、そうしたいけど、いけないの。心が曇ると見えなくなるみたい。だから、ね」
少女が寂しさを微塵も感じさせない強い笑顔で私を見る。
「あなたが伝えて。私を。ここにいるんだって。今も大好きだからって、伝えてほしいの」
いい大人にもかかわらず、じわりと目頭が熱くなる。これではいかんと袖で拭った。
「でも、私はあまりこういうことを話の種にするのは気が進まないよ」
「あなたには真心があるから大丈夫。だから私が傍にいるのよ。もっと自信もって」
風に吹かれた彼女の髪と、黄金の結び飾りと、花びらが舞って。
ああ、綺麗だと心が洗われる心地よさに、その言葉に、再び救われながら。