魂の伴侶

魂の伴侶

何もかもの一切の過去のしがらみを抜けて、

静寂が訪れた頃。

凪いだ風のように、心も澄み渡り、心持ちがひとつにかたまる時、

それはふたたび訪れる。

ささやかな、ひとつひとつの歓喜をもって、運ばれてくる。

それをひとつずつ受け取っていけばいいのだ。

「目の前に見えるもの、つい見過ごしてしまいそうな中に、喜びがあることをいつまでも心にとどめておきたい」

千歳はそっと呟いた。

千迅は少し黙ったまま、何かを考えていたようだがやがて、

「真正面から、ずっと正直に生きていると、心が澄んでいくのを感じる、それまでの思考が流れていく。そうした生き方がきっと合っているのだとようやく最近になって気づいた気がするよ。今までのがむしゃらさなんて置いてさ」

彼女は静かに頷き返し、

「何かに必死になって掴んでいこうとすればするほど、追いつけなくなる、私らしくなくなる。そんなのは嫌だもの。私たちはもっと私たちらしくいられるはずだと」

「でもまあ、そういう時もあったからこそ、自分たちらしくいたいって思える。どちらが良くて、どちらが悪いとも言えない。その経験が私たちを強くする。前を向いて進んでいける原動力になる。どんどん本質に近づいていく」

「あなたと話していると言いたいことがなくなるわ」

彼女は少し眉をハノ字に曲げて苦笑した。

「くくく、それって褒めてる?嬉しいよ」

千迅は途端に、嬉しそうに笑みをこぼした。

「悔しいけど、そういうことにしておきましょう」

「悔しい?そう思う必要なんかないさ。君と私の思いが一致しているってことだろ。むしろ君も素直に喜ぶべきだ」

千歳はふうと息を吐いて

「素直に、ね。あまり心を把握されるっていうのも、なんだかこそばゆいのよ」

「見透かされる気がして?」

「うーん……神秘的に。謎めいた者の方が、いいと私は無意識に思っているのかも」

「確かに、その方が魅力的ではあるね。でも、まあ私たちの間ではそんなことは無用さ。……たまに君のことを掴みきれない時もあるし。不安なんだ、君が分からない時があると」

千迅がこそっと呟くと、彼女は目を丸くした。

「だから、分かりやすい君の方が私としては助かるかな」

「でもそうだと、私……」

そこまで考えて、千歳ははっとした。

自分がそうまでしないと飽きられてしまう。そんな存在になりたくない、と。

「私ったら、また変な思い込みしてたわ。こんなこと疲れるからやめる」

「ははは、君ってほんと切り替え早いよね」

千迅はそれを知ってか知らずか、また快活に笑う。

そうやって、お互いの思い込みを外していく。

終わりなき旅路の、その先を歩いていき、やがてひとつとなっていくのだ。

それこそが魂の伴侶といえるべき存在へとなっていくために。