
「昨夜また不思議な夢を見たのよ」
千歳は嬉しいそうに千迅を見た。
「君の夢物語は毎回楽しみさ。それでどんな夢?」
「ふふ。……夢の中で、私は誰かを探していて、向こうから人が歩いてきたの。探していたその人よ」
彼女は生き生きと語り始める。その様子を、千迅はいつも愛しく眺める。
「それで、”やっと見つけた!”と声をかけて、その人の手を引いて走り始めたの。その人は、手に箱を持っていたんだけど、何かしら、豪華な何か見たことない……とにかくそれが弾みに落ちてグシャッと崩れたのに、彼は笑顔で私に手を引かれていったわ」
「豪華なものを君に与えなければと思っていたのかな、その彼は」
「そう、きっとそんな感じだわ。でもそんなものなくてもいい、私にはあなたが必要よ、て私が伝えてるみたい」
「とっても素敵な夢だね。その相手が私であればもっと……」
千迅は、頬杖をついて彼女に視線をやった。
「それは……」
彼女は少し言いよどみ、目線を落とした。
「見たことない人だったし、そもそも私も私じゃないような感じで」
「それならいい。君が他の男の虜になるのは耐えられない」
千迅はすっと視線を他へ移して満足げに笑う。
「君の隣は私だって決まってるんだから」
「そんなの私だって、あなた以外の隣なんて考えられないわ」
「本当に?」
千迅が再び、しかし今度はじっと彼女を見据えた。
「ええ」
迷いなく答える千歳である。
彼女の様子に千迅は、ふっと笑みを浮かべた。
その晴れやかな瞳に、千歳はなぜか胸の奥がむず痒いような、不思議な感覚を覚えた。
「あ、また新しいものが描けそうな予感」
「奇遇だね。私も」
それが彼と彼女の、新しい予感が同時にやってきて、創り出されるもの
世に送り出されるものである。
