虫愛でず姫君

虫愛でず姫君

「姫、少し手を緩めてくれないか」

「あ、ごめんなさい!」

パッと彼の衣を手から解放する姫に、彼は少し不満気だ。

「放せとは言っていない」

「え?」

彼、五月雨の唐突な言葉に、葉桜の姫君はじっと彼を見つめて手のやり場に戸惑っていた。