「随分と楽しそうですね」
千歳の横からずいと身を寄せて、絵巻を覗き込む彼の瞳は、少し疑念をはらんでいる。
「あなたも気になる?」
「ええ、まあ・・・いや、そこまでは」
どちらでしょうと、言いたげに彼女は笑い声をたてる。
「まさか、私を試しているのですか?」
「いいえ、そんな風に見えたら悪いけれど、純粋に楽しんでいるのよ。いけない?」
「なら良いですが。絵詞より、もっと楽しめることがあるでしょう」
千迅は、彼女と言葉を交わすことを望んでいるようだ。
しかし、彼女は絵巻に全く夢中である。それもそのはず。
(あなたに似ているから楽しんでいるのだけど)
小さく笑みをこぼして彼の反応までも楽しむ、彼女自身、自分が狡い者だと思いもし、
やはりその見慣れない顔が、見ていて嬉しいのだとも感じていた。