そこまでに

そこまでに

「して、おきましょうか」

彼女の止まらぬ躍動感あふれる行動力に気圧されそうになり、高時は咄嗟にその手をとどめた。

「少し休みましょう。あなたはやり過ぎです。普段から。腕を痛めてはいけない」

「そこまで描いているようには思えないけど……」

「あなたの中では。そうかもしれませんが……私から見るとあなたはそのままどこかへ飛んで行ってしまいそうだ。いつかは還ってくると分かっていますがね。それではあまりにも心もとないよ」

傍近くで囁かれては、さずがの彼女も彼の話に耳を傾けずにはいられなかった。

「分かったわ。今回はあなたの助言を聞き入れることにする」

それでも絵巻を離そうとしない彼女に、黙って目で訴えると、

「わ……分かりました」

観念した彼女が、彼に絵巻を手渡した。

千歳の素直な様子に、高時は満足気ににっこり笑みを浮かべた。

普段あまり笑わない彼の笑みが、彼女の心を魅了して。

そっと二人布団の中へと溶けていった。