「私も龍神さまになれたら、きっとこんな風に……!」
目を輝かせて空想を振らませる彼女に、男は困惑していた。
頭には龍の角、人の身体、足は蛇……様々な生き物の部位を寄せ集めた……これではまるで
「鵺みたいじゃないか。どうしてそれで心をときめかせる」
「だって。きっとかっこいいですもの……」
「君はちょっとズレてるな、俺の方が余程人間ぽい」
自身も生身は人だというのに、龍でもある彼は、呆れて彼女を見た。
「そうでなければ、あなたと共にいられませんもの」
振り返る彼女に、ああまた。そんな無自覚に、無邪気に。
「せっかく純粋に人に生まれたなら、半端な気持ちを抱くことはないだろうに」
「いいえ、半端じゃないわ、立派な想いよ。私だけの」
ふと見せた綻びに、惚れた自分の負けだと悟り始め、秋の澄んだ朝を眺めた。