「こういう事は、龍王さまと、龍妃さまのお仕事でしょう」
控えめに男の胸に手を置き、その動きを封じた。そして、気を逸らせようと言葉を続ける。
「私たちはあまり近過ぎるのも考えものよ」
俯く彼女に、彼は、耳元で囁く。自分の声が良いことを自覚しているからたちが悪い。
「ただ幼龍を育むための行為とだけあなたは考えているのですか。本当に大切なことはこのことを通じて二人が愛し合うことですよ」
愛を育む行為だと、彼はそう主張する。
「ただ。あなたが嫌なら強要はしません。私はいつまでも待ちますよ。幾年でも」
「3000年経っても?」
「それはまた気の長い話だな」
普段そこまで笑わない彼が、珍しく笑みを浮かべて笑い声まで立てている。
「私は精神的な繋がりを重視する方なので、それでも構いませんがね」
彼が大人しく、身を引くと、彼女は安堵して深呼吸した。
彼女の白い頬はうっすらと紅潮している。
「少し意地悪が過ぎましたか」
「ええ、そうよ。……もう」
彼女の控えめな笑みを見届けて、彼は満足気に再び笑っていた。