新たな風を受けて、静かで仄かに明かりが灯るこの場所で
連綿と紡いでいく物語を、心待ちにする龍たちを穏やかに見つめていたい。
「どうして私を見ているの?」
水色のたてがみをゆらゆらとゆらめかせ、紺碧の美しい瞳の彼女が一途に私を見やった。
「ただ見たいから見ていたのよ」
彼女は照れくさそうにしていたが、一瞬も私から目をそらすことはせず髭もまたゆらめき、肩に触れた。
「早く、続きを描くんだろう。逢瀬を先延ばしにするものではない」
薄紫のたてがみを持つ彼がやきもきして髭を手に触れさせる。
「そう急かしてもよい物は生まれないわ。こういったことは、機を見る忍耐が必要なのよ」
「しかし、時にあなたは大胆な方だ。今がその時では」
彼のせっかちな性格は相変わらずに、私の筆を無理矢理にでも進ませようと促す。
「まあ、主の言うことも一理あるわ。急がせてはいけないわよ」
彼女は彼をじっと見つめて制した。彼は彼女には頭が上がらず、再び控える。
「理解ある龍たちに囲まれて、私は幸せ者ね」
すらすらと走らせた筆の先がいつもより軽快に動いて、心地良く。
この物語にどのような彩を添えていこうかと思案していた。