あの日一目見た時から、あなたのことが忘れられない。
ほとばしる水の透明感と、水滴と、何もかも。
走り描きの癖が、きっとお互いに同じだと分かる。
すれ違った瞬間、その背中合わせになろうかという時、男が、女に声をかけた。
そう、きっとそのまま声をかけなければお互いに気付かない、どこかへ行ってしまう。
「ちょっと、待ってください。前に……ああ……どこだったか」
「あなた、私を知ってるの?」
「ええ……おそらく」
男は、頭を捻っていたが、やがて顔を左右に振った。
「きっと、会った気がするんだが」
「そう……だった?」
顔を見合わせた二人の時が、繋がった。
隣り合わせで座った、いつかのあの夢の君。