本当は

本当は

あなたにどう伝えようか惑っていたけれど。

「とっくの昔に決めていたのに、曖昧なあなたにヤキモキしていたの。どういう心づもりでいるのか知りたくて」

ふと息をついて、彼を見上げた。


「でも、もういい。あなたの好きにしてほしい。自由に表現してもしなくても構わない」

彼は、殊更意外だとでも言いたげな表情で、こちらを見据えた。少しそれがこそばゆくて、伏し目がちになってしまう。


「それであなたは満足ですか」

そんなはずはないと。彼の目が訴える。


「そりゃ、もっと言葉や態度で表してほしいと思うけど、強要してそれを得たって、そんなに嬉しくないじゃない。お互い」

彼の小さな息遣いが聞こえる間近の距離で、背中合わせに空を見上げる。

彼の性格を曲げてまで、なんて、そんなこと。

「でも、私だって自由に振舞わせてもらうわよ。あなたが妬いてしまうかも」

「はは、そんなことは」

否、お見通しかと、彼は苦笑いを浮かべていた。

「こんな高飛車なこと、あなたの前でしか言えないもの」

「本当に高飛車なひとは、そんなことは言わない」


ふふふと、笑みをこぼしてその時を、緩やかなその時を楽しむ。

この時こそ、きっと求めていたものだから。