「またあなたなの」
「それはこちらの台詞だ。まさか君は私に追いかけられているフリをして、私を追っているのではないですか?」
「御冗談。そんな暇はないわ。私はあなたと違って忙しいのよ。昼も夜も」
「それはこちらも同じこと」
何をするにもついてまわる、お互いを鬱陶しいと思いながらも、
それが心地いいと感じてしまっている二人。
傍から見たら、二人は敵同士だと、しかし、ある者から見れば、
彼の二人は想い合っているのだと、噂する。
そんな噂の種にされているなどと、知ってか知らずか、
構わず、彼らは今日も追いつ追われつ。
今日もまた、闇の待ち合わせ場所へと溶けていくのだった。