「どうかしましたか」
突然に彼女が私の肩に顔を近付けて、匂いを嗅いでいる。
一体どういうことか、自分で言うのもなんだが思慮深く、深読みして慎重な私を惑わさないでほしい。
「ちょっと……なんとなく」
「においますか」
「いいえ」
即答する彼女の顔は少し真剣でますます意味が分からない。
すると、やがて彼女は、ふふと笑みを浮かべた。
「あなたの匂いっていい匂いね」
「そう、ですか……」
なんとも複雑な心地である。喜んでいいのか、深読みすべきか…
「いい匂いの相手は相性が良いらしいわ」
そう、まさにそのことを考えていたのだ。彼女は超能力者。
「私に相性が良いことをアピールするなら、他を見たりせず私だけを見ていればよいのに」
「他って?」
「あなたの興味関心が私に向いてない時があるでしょう。それが口惜し……」
はっとして口を閉ざすも遅く、彼女はまたふふふと笑みをこぼした。
「あなたのそういうところが私を困らせる」
咳払いも空しく、彼女の密かな笑い声が耳に響いていた。