新たな世界に旅立つために過剰なものは置いていこう。
今までは役立っていたもの。一致していたものでも、
自分の心に問い決め、参考にするのは風の動きも何もかも。それは全て偶然ではないから。
「君が主役だ。これからどうしたい?」
「そうね……私は、何かに夢中になっていたいわ。これから先もずっと」
「それは、俺……ではなく、絵なんだろうな」
千迅は少し伏し目がちに、だがそう言い切った。
「あなたには何でもお見通しのようね。でも、あなたは私には必要なひと。それは揺らぎようもない事実よ」
「そうだろうか、君ならひとりでもやっていけそうだ」
「それじゃつまらないじゃない。欲張りじゃいけないの?」
男性性と女性性、双方がバランスを保ってこそ真の力を発揮する。彼女はそう確信していた。
「じゃ、君と信じて進むのみ」
そんな千歳の様子に、彼はさっぱりと呟きついてゆく。