手が届くまで

手が届くまで

伸ばしたい


そう言わんばかりに、晴れやかな瞳で自身の夢を語る彼女。

ありありと、伝わってくるのだ、まるで、水を得た魚、否。


鯉が瀧を昇って龍になるように。

それまでの暗い洞窟から飛び出して、


再び、意気揚々と天に舞い上がる。

「やはり、どこかで……」

言いかけて見送る彼女の背中を彼はふと振り返る。

あの時、交わっていた瞳、なのに。

彼女だけこちらよりも上を向いているのが、彼にとっては意外だと

いや、必然であったかと。


勝手に少し惜しい気になる方が、彼にとっては一番の驚きであった。