心で感じていた不満や怒り。どうして心を許せる相手にはそう感じてしまうのか…
そう思った時に一度立ち止まって、考えてみたら、相手ではなく自分のことで意外な事実に気付く。
私が相手に求めていたこと、それは私が私に求めていたこと。
そう気付いた瞬間、なんだか恥ずかしい心地になって、
”どうしてあそこまで求めて不満がっていたのだろう”と雷に打たれたような気付きと共に、
やはり羞恥心が勝ってしまう。
「恥ずかしがる必要はないさ、俺と君の仲だろ」
それでも当然のように受け入れてくれるひとが傍らにいてくれるのは、とっても幸せなことだ。
「でも、なんだか恥ずかしいわ、私」
「ただ、ふたりでこうして静かな時間を共有したい。俺が願うのはそれだけだ」
ただ瞳を閉じたまま、その場の空間を楽しんでいる。
彼女も、少し戸惑いつつもその流れに身を任せた。
寒空をゆったりと流れる雲のように。
「ほら、こうしていると心が落ち着くだろう」
「……ええ。不思議ね。心が凪いでいく」
ふわりと穏やかな風が吹き、ふたりはじっとその場の時を味わった。