「水で蕎麦は茹でられません。その時を静かに待つのも肝要かと」

「水で蕎麦は茹でられません。その時を静かに待つのも肝要かと」


一人で駆け回る利発な少年龍を、

暖かく包み込み、穏やかに言葉をかける二龍。

「何事も適切な時は必ずやってくるわ」

「水で蕎麦は茹でられません。その時を静かに待つのも肝要かと」

相変わらずの言い回しに、霙は不満気に彼を見上げた。

「あなたはいちいち言い方が回りくどいの」

「いけませんか?では、もう少し端的に…」

「もう十分だよ」

心もとなそうな顔をしていた葵が、いつの間にか笑みをたたえている。

「ちゃんと伝わったから。変なの二人とも…面白い」

少年のめったに見れない笑顔に二人は顔を見合わせて、驚きやら嬉しいやら。

なんともいえない心持ちで見守るのだった。