最初見た時と、今の印象は大きく違っていて、
意外と直情的だったり、冷静だったり。
本当のあなたは一体……
「さて晴れた月の夜に、こうしてまた共にいるわけだが、君は何か俺に話したそうにしているな」
男、神峯は、白菊へふと視線をやった。
それを受けて白菊は、穏やかに瞳を閉じて答える。
「特には何も」
「はは、つれないことを言う。しばらく君に逢えない日々が続き、俺は身を裂かれる思いであったぞ」
「まあ、それは本当のことかしら。貴方さまのこと、きっと思いのままに振舞っておいでだったのでしょう」
「それで、君は妬いてくれたのかい?」
「自惚れるのも大概になさいませんと」
また弾けるように笑い声をたてた、神峯に、白菊も控えめに笑みをこぼした。
「貴方さまとこうしているより、千歳の絵巻語りを聞いている方が余程心のなぐさめになります」
「なんと、それは私が妬いてしまうな。そもそも、俺といる時必ず彼女の名を出す。なんとも歯がゆいことだ。そんなにあの侍女がいいのなら、いつでも傍らにいるようにしてやろう」
「そのように傍若無人な振舞いをする貴方は嫌いです。千歳は、心のままに穏やかに、彼女の好きなように過ごしてもらうことで、素晴らしい作品が出来上がるのでしょう。貴方にそれを支配する権利はなくてよ」
「君に何度嫌いと言われたことか。……まあでも。そうだな。君の言う通り。彼女は自由に在るべきだ。それで、俺たちの恋物語を描くならば」
「私たちの恋物語かどうかはともかく、たとえ貴方さまといえど私の楽しみを自然のままになさらないのなら、貴方さまに刃を向けます」
白羽の矢を放つが如く、鋭い眼光の彼女の眼差しに、彼は背中がぞくりとして、
そうそう、それよ。それが欲しかったのだと言わんばかりに今度はこちらが控えめに笑みをこぼしていた。