「この曲者感が好きでな……」

「この曲者感が好きでな……」

「ならばこうしましょう」

主の無理難題にも、あの手この手の策を見出し、並べ立てる従者。

そんな切れ者の彼に主が満足気に友に漏らす。

「この曲者感が好きでな……」

彼の魅力を語り始めた主をよそにはしっこい従者は得意になり、つらつらと話し続ける。

「ただ、あの侍女の前では形無しのようだがな」

背を向けていた従者の肩がびくつき、ズズズと主の方を振り向いた。

「あの、私の話を聞いていましたか」

「ああ、もちろん」

主は余裕な笑みを浮かべて従者の反応を楽しんでいる。

小さく咳払いをして、顔を背けた従者の耳が少し赤く染まっていたのを、主は見逃さず、

自身の供の可愛いことよ、と愛でていたことを彼は知らない。