「次はどこへ行こうか」
そよそよと吹く風に、二人歩を進めていく。
「どこでも楽しいから、どこへでも」
「その言葉はありがたいが、もっとわがままになってくれよ。じゃなきゃ君のことがもっと深く知れないしさ」
「私を深く知る必要なんてないんじゃない?あなたはわたし。わたしはあなた」
「それじゃつまらない。それに君が思っている通りの男かどうか分からないぞ」
「まあそう?本当はどんな人なの?」
「言葉で言い表せるほど浅い男だと思うのかい?そんな相手、君は端から相手にしないはずだろ」
千迅は心を風にのせて千歳に視線を移した。
「あなたやっぱり面白いわ」
控えめに笑い声を漏らす彼女に、彼も気分良く笑みを浮かべていた。
「じゃあ、風の吹くまま気の向くまま。思いのままに」
「それは名案ね」
風にまかせて、君となら。どこへでも。