ふと見上げた瞳が、あなたのものと重なって視界を遮られる。
宵闇の中、二人だけの空間で。
彼は何も言わず、こちらに忍び寄り静かにくちづけた。
彼女は、その瞬間、戸惑いと。
好いた男に唇を奪われたという喜びと、半々の心地で、とっさに
女は男を多少拒んでみたい、そうしたら彼は自分をより求めるのだろうか
と試してみたい気持ちになっていた。
女は少しだけ男の手から逃れようと、抵抗を見せた。
しかし男がそれを許さない。
なぜ拒む、と男が訴えるように掴む手に力を籠め、くちづけがますます激しく
切なさを帯びていく。
彼女の思惑通りに男は女を強く求めた。
女はそれに喜びを感じてしまって、そして
少しの罪悪感の償いと共に彼を穏やかに受け入れていた。
目覚めた日の朝、かすかなそれを心に感じて、ふと疑問に思う。
(消えたぬくもりは誰のもの?)
夢の中へ想いをめぐらせながら。