かすかな夢の中で

かすかな夢の中で

ふと見上げた瞳が、あなたのものと重なって視界を遮られる。

宵闇の中、二人だけの空間で。

彼は何も言わず、こちらに忍び寄り静かにくちづけた。

彼女は、その瞬間、戸惑いと。

好いた男に唇を奪われたという喜びと、半々の心地で、とっさに

女は男を多少拒んでみたい、そうしたら彼は自分をより求めるのだろうか

と試してみたい気持ちになっていた。

女は少しだけ男の手から逃れようと、抵抗を見せた。

しかし男がそれを許さない。

なぜ拒む、と男が訴えるように掴む手に力を籠め、くちづけがますます激しく

切なさを帯びていく。

彼女の思惑通りに男は女を強く求めた。

女はそれに喜びを感じてしまって、そして

少しの罪悪感の償いと共に彼を穏やかに受け入れていた。




目覚めた日の朝、かすかなそれを心に感じて、ふと疑問に思う。


(消えたぬくもりは誰のもの?)


夢の中へ想いをめぐらせながら。