ひとときでも

ひとときでも

あなたの瞳を奪えたら……

「誰もがそう思う相手を射止められるのは、とても幸福なことさ」

「本当に好きな相手に好かれることこそ、とても幸福なことよ」

とても似ている彼と彼女の主張は、若干のズレを伴いながらも刺激的で飽きることなどなかった。

「それは勿論、もてるから好きなわけじゃない。ただそれだけ魅力的ってことさ」

「自分ではあまり意識したことはないけれど……きっとそれはありがたいことね」

「それ。そういうところだ。君は無意識だから。外を歩けばいつも蝶々が近づいて来るだろ」

「それは誰だって普通のことじゃないの?」

「普通じゃない。特別だ」

彼は意味深な顔で彼女を見つめていた。