「ここに来るまで苦しくはありませんでしたか」
お互いに心に決めたことだと分かっていながら、未だあなたに遠慮してしまう。
「なぜ?」
いつでも純真な瞳を絶やさない娘は女へと変わっても、何ひとつ変わらずに。
友二人に導かれて、私の元へと駆けてくる。
満足気な二龍に穏やかに頷いて、彼女をこの腕に包む。
「お二人がいたから、何も不自由はなかったわ。いつも私を優しく見守ってくださったのよ」
今改めて、二龍に心からの礼を述べたくなるが、今は目の前の彼女との逢瀬の喜びを嚙みしめた。
「これからどうしたいですか?」
彼女は私の問いに少し思案した後、花の如き笑みを浮かべて答えた。
「今は、このままで」
心から満たされた彼女の顔にこちらの胸もいっぱいになった。
神に誘われた一陣の風に運ばれて、新しい世に飛び込んで、あなたと共に。