心を込めて描き綴る絵巻を、ますますの繁栄と安寧を祈りつつ。
ふたたび、自身の心に添った求めるものを選び、掲げていきたい。
「そういえば、今度の天礼祭で神峯殿が舞を披露するそうだ」
「へえ、そうなのね」
「白菊殿も一緒に」
それまであまり興味がなさそうにしていた千歳が、思いきり白紙に筆を滑らせてしまう。
「ほ、ほんと?それって……白菊さまそんなこと一言も……」
「きっと恥ずかしいかったのさ。自分から言うのは。それより俄然興味が出てきただろう。行かないか?一緒に」
「ええ、それはもう……でも私そういう場は得意じゃないけど大丈夫かしら」
「心配ない。俺が誠心誠意案内致しますよ、お姫さま」
「ええ?ふふ、何を言っているの、おかしなひと」
「お忍びで行くんだろう、その方が君が安心できるなら。喜んでお供しますよ」
「お忍びじゃなかったらどうなるの?」
「そりゃもう、派手にさ。神峯殿と白菊殿に負けないくらい雅な恰好して、冷やかしも兼ねて夜店を練り歩く」
「そんなこと、ふふ、もう……普通でいいわよ」
「決まりだな」
少し困ったようによく笑う千歳に、千迅は満足気な顔をしていた。