びたっ

びたっ

「今度はあなたが突然ね」

彼女は意外だとでも言いたげにこちらを見た。

彼女の髪をいじり、目線は合わせない。

じっとひっついていれば、彼女の心を占められるなどとは考えてはいない。がしかし……

「何かついてる?」

「いいえ」

即答して押し黙っていると、彼女は照れ隠しに少し俯き加減であった。

そう、それでよいのだ。私に照れるあなたが見たかった。

「私にもまだその好機があると、思っていてもいいね?」

独り言のように彼女に囁く、珍しくなれなれしく。

「いつでも」

そう彼女も同じく独り言のように呟く。

それだけで通じ合っていると思う。そんなおめでたい思考の私も悪くない。