「絶対にこれを手放してはいけないよ」
ふと、手渡した、まだ空白の絵巻に多少の力を込めて。
少年とも青年ともとれる、若者が。
これまた少女とも娘ともとれる、若者に。
渡した煌めきの星々とともに。
彼女、千歳はそれをしっかりと受け止め、控えめながらも凛とした表情で頷き返す。
「あなたはこれからどうするの?」
「そうだな……どうしたものか」
それまでじっと彼女を見つめていた彼、千迅が目線を外した。
足元の貝殻を眺めてふと息をつく。
「……君がもしよければ……一緒にいてもいいかな?」
少し幼さが残る千迅のひとことに、千歳は満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。
「一緒にいてくれたら私も嬉しい」
千迅は顔を上げて、こちらもまた嬉しそうに、明るい表情になっていた。
ふたつの綺羅星が空に瞬き、ふたりのこの瞬間を末永く見守っていた。