
「あなた、どうしてそんなにひとを喜ばせようとするの?」
「なぜ……と言われても。それが私の核だからですよ。喜んでくれる方がいるなら、この力を使わないなど。そんな傲慢なことはない」
「でも、自分の中で、その愛がなくなったらどうしようと思わない?怖くないのかしら」
千風は少しだけ沈黙していた。
こういう時に、彼は黙っていれば、というほどに顔は整っている。
「もし、あなたの愛が相手に届いていなかったら、と不安にならないの?」
千珠が重ねて訊ねた。
「そうですね……確かに。それは悲しいかもしれません。ですが。まあ、それはその時悲しめばいいこと」
今度は彼が彼女の瞳を探る。
「今は、あなたの心はどちらを向いています?過去ですか?それとも」
「ふふ。今ね」
「それで十分なのです。ええ。それだけで」
お互いに笑みを交わし合った。
こうして静かな夜が更けていく。