あなたへ寄せる物語

あなたへ寄せる物語

大河の一滴を超えた頃。

静かな決意を胸に秘め、また再び歩き出す。

先送りせずに今、今この時から変われるところから、探し出して見つけ出して

自分の魂を輝かせていこう。

「この世が毎日祭りの夜で賑わっていたなら、楽しいだろうな」

千迅がふと、呟くと、千歳は少し困ったように笑みを浮かべた。

「毎日なんて豪勢ね。静かな夜の方が私は好きよ」

「今は毎日が穏やかで、静かだろ、少しは羽目を外しても……」

「羽目を外したい?」

「そりゃ、たまには……あ」

「ふふふ」

彼女は不思議なくらい穏やかに笑う。

「毎日祭りだと、そのうち飽きてしまうわ。特別感がなくなってしまう。案外あなたが求めているものって、こういう穏やかな日常の中にあるものだと私は思うの」

「そうだろうか?」

「ええ。こういう日常が尊いものだと愛しくなるわよ。きっと」

「君のように考えられたら、いいのにな」

「そんなこと。あなたの考えも私の刺激になるのよ。創作に生かせるし。単調な作品じゃ描いててもつまらないもの。だから、たまには、が必要なのよ。そしてあなたも」

「ふーん……まあ、それならいいか」

彼は少し照れくささを隠すように視線を外し、その様子をまた愛しく彼女は見つめていた。