ゆらゆらと揺れるぼんやりとした灯を手に、
暗い夜道をゆったりと進む。
「この先は未知の領域。獣や邪が出るやも」
男が女に目線をやると、彼女は笑みをたたえて口を開いた。
「それが蛇なら大歓迎だわ」
「邪と蛇をかけてるのかい?」
「まあ、別に蛇を邪なものだと思っていないわ。龍神も蛇も大好きよ」
それはうらやましい限り。
じと、と龍神雲を見やった男に、キラリと光る星。
「このように背を並べていると、対等になった心地ですよ」
男は少し自嘲気味に呟くと、女が目を丸くして答えた。
「あなたと私に上下なんてないわ。それぞれにできることが異なるだけよ」
ほら、と彼女は灯を指し示した。
「今はあなたがこうして灯篭を持ってくれてないと、私は暗くて歩くのもままならない」
「君にこれを渡せば?どうでしょう」
「立場が逆になるだけよ。どちらも同じ。対等でしょ?」
「ふむ……なるほど。目から鱗ですね」
ふふふ、と笑みを静かにこぼす彼女に、彼は深く納得したようだった。
紺色の影が歩みを進めていく、龍神と、その星の煌めきとともに。