第二章 幼い若龍と姫龍(其の弐)

「霙と申します。若龍さま、お会いできて嬉しゅうございます」

幼い手を膝に重ねて可愛らしく笑みをこぼす少女。衣は薄い桃色や浅葱色、すっきりとした色合いのものを着ている。

しかし、少年の方はいささか不満気な顔をして、頬杖をついていた。

「ふーん……」

少女は、めげずに少年に話しかける。

「龍王さまからお聞きしました。若さまはとても元気な方だと」

「まあ……」

会話が瞬く間に終わる気まずい空間に、なぜか千迅と千歳も少年に呼ばれていた。

「どうして俺たちが呼ばれたんだろうな」

千迅が、千歳に小声で耳打ちすると、彼女は

「お二人だけじゃ、気まずいからでしょう。でも今まさにそんな雰囲気だけど……」

「なんかした方がいいかね」

「いや、若様が声をかけるまで余計なことはしない方がいいと思うわ」

もそもそ二人で喋るのを、スパッと切り替えるように若龍が口を開いた。

「お前は、じいに言われて来たのだろ。無理して俺に合わせる必要はない。俺にはこの二人がいればそれでよい」

「それで俺たち呼ばれたのかー……」

合点がいったと、千迅と千歳は暢気に納得してしまっている。

「それにいつかは俺に付き従わせて第一の臣下にする」

「ええ……」

「まあ……!それもいいかもしれないわね」

「おい」

乗り気でない千迅の反応に、千歳も苦笑いをしていたが、彼女は少し満更でもないような顔を見せた。

「でも若さま、姫さまがせっかくいらして下さったのですから、お話し相手になっていただいたら。姫さま、若さまは物語などがお好きですよ」

「そうなのですね!わたし、お話は少し得意です」

姫は素直に喜び、何をお話ししようか考えている。

「恋愛の話は御嫌いみたいですがね」

じと、と千迅がなぜか千歳を見て言い放つ。彼女は彼を見て意味をはかりかねている様子。

「いや、いい。物語は別に今聞きたいわけじゃない」

若様は、変わらず不機嫌な様子だ。再び気まずい空気が流れてくる。

姫は、少し考えてから、口を開いた。

「わたしはずっと雪鷹さまにお会いできるのを楽しみにしておりました」