
「私たち、ずっと一緒にいられるのね」
「もちろんさ」
「嬉しい……」
衣擦れの音が響き、龍の鱗まで袖口に紛れてひしめき合う。
「こうしていて離れるなんて考えられない。君が私から離れようとしない限り」
「ふふふ、あなたから離れるなんてありもしないこと」
密やかな声の囁き合いは、外から聞いていれば、こっ恥ずかしくなるような、そんな睦み合う二匹の龍。
「でもこうしていたらまた龍族の神様に怒られてしまうかもしれないわ」
「天龍殿にかい?いいさ、そんなのは放っておけば」
「まあ……ふふ。でも本当よ。遠い国のお話しで、七夕という伝説があって、、」
「天帝から与えられていた仕事を恋愛ばかりしてサボっていた織姫と彦星を、天の川で引き裂く話だろ、一年に一度しか会えない」
「そうよ。もしそうなってしまったら……嫌だわ」
「君は心配性だな。大丈夫さ。私たちの間は誰も引き裂けない。私は君が離れていくことの方が嫌なんだ。酷く心配になる」
「どうしてそんなこと……」
「だって君はこんなにも魅力的で、他にも大勢の龍たちに言い寄られてるんだろ。俺はそれが心配なんだ。君が誰かに心移りしないかと」
「嫌だわ、そんな有り得ない。それこそ心配性はあなたの方よ」
「そうかなあ」
横目で彼女を見る青年。
これで満足だと。
そう二匹の龍は心からそう思っていたが、
実際はそれぞれの深い奥の方に、ふつふつと。
“本当にこれでいいのだろうか”
という疑問が拭えずにいた。
彼女は、何かに心を燃やしたいと切に願う。
彼はそんな彼女を心から深く愛したいと
今でも十分彼女を愛しているというのに、なぜか物足りない。そんな気持ちで。
これからそう遠くない未来。二龍は二度生まれ変わり、ヒトガタの神として、一千年先も、その役目を全うする。
ただ一人の貴女のために。
