
「近頃は、そなたとこうして逢うのも容易くなり、俺は嬉しく思う」
若君がそっと隣の姫に語りかけた。
姫は頷き、
「ええ。私も、この頃は自由に外を出歩くことも許されています。それもこれも全て千歳と千迅のおかげね」
神峯は、すっと彼女を見据えた。
「全て?」
「ええ」
白菊姫は屈託のない笑みを浮かべた。
対して、神峯は渋い顔をしている。
「うーーむ……まあその通りではあるが。まあ良い」
「……もちろん、あなたさまのことも。ええ。だって、こうした私の立場を承知の上で、向かってきてくださる殿方はあなただけでしたもの」
その気があっても動く勇気はいつの時代も、それは等しく必要なことだ。
特に男女のことに関しては
「難しいな」
姫は不思議そうに彼を見上げた。
「姫にそう褒められるともっと欲しくなる。千歳や千迅より俺が頼りになると君に分からせてやりたくなる」
「あなたさまのそのような素直なお言葉にこそ、頼り甲斐があると私はそう思うております」
心を開けなんだいつだったかそんな時代のことを思い出しかけて、神峯はふと息をつく。
”殿方は素直な方がよろしい”
その時、君に教えてもらった気がする。
