
「何度もやってみて失敗したとしても。そんな時を経てうまくいった時、とても嬉しいのよね」
ある時のことだ。
少女はそう言って、晴れやかに少年を見た。
「そうなんだ。私はせっかちだから、うまくいくまでやきもきしてしまいそう」
「あなただって研究者気質なんだから、実験感覚でいつの間にかうまくいかせてしまいそうだけど」
「君ほどじゃないよ。私は本当は飽きっぽいところもあったりするんだ。君はすごいよ」
少年は少女を見つめた後、空を眺めた。
「いろいろなことに興味をもてることもすごいと思うわ」
「ふふ。そうかな」
少年は少女の言葉に素直に喜んでいるようで、再び彼女を見て微笑む。
「そろそろ行きましょうか」
そう言って彼女は、彼の手を握った。
その時、一瞬少年の瞳が揺れ、
少女を映して。
「……ここにいられて良かった」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
私はここにいる。それだけで何かある証だ。
前にそのようなことを、彼女に言った気がして。
そしてその何かはきっと、彼女のために――
それを彼女に語るのは、まだずっと先のお話し。