舞う華をこの手に

舞う華をこの手に

この時が長く続けばいい。

何もない真っ白な空間が、果たして瞑想状態と同じかと分かる頃。

一枚、また一枚と真白い花びらが、風にのせて。

「このままでいいのだろうか」

ふと千迅が呟く。

「何か気になるの?」

「いや、まあ……きっとこれは周囲と比べてしまっているせいだよな。だからこそ、今までの習慣で比べて今の自分じゃだめなんじゃないかと思ってしまう。もっと良くしていかなければという欲がさ」

「……気にし過ぎなのか、気にした方がいいのか分からない時があるわよね。私もそれは感じているわ」

千歳はぎゅっと絵巻を手で包む。暖かくほのかな光。

「でも、私たちって、気にし過ぎな方に入ると思うから、いい加減な方がちょうどいいのかも」

「君にしては珍しいことを」

「ふふ、そうよね。でも、気にし過ぎて、もっと大事にしたいことをおろそかにしてはいけないから」

「他のことはほっといても?」

「大丈夫じゃないかなって、私は思うの。今は。色々なことに心を持っていかれるより。大事なことだけ一点集中したい」

「……そうか」

ふと、千迅は穏やかに笑みをこぼした。それでいいのかもしれない、と心がほどけた瞬間だ。

「私たちらしく、私たちの中でそれで良ければいい。みたいな感じで。曖昧だけどそれが一番いいのかもしれない。これからの時代」

「うん。まったくその通りだな。俺もそうでありたい。駄目になった時考えればいいか。もっといい加減にさ。色々やってみる方が楽しそうだ」

「そうそう、楽しそうな方がいいわよね」

こうして二人の夜はほっと過ぎてゆく。

手探りな時代に、二人だけ。

言葉を交わして進んでいくのはとても穏やかな時で、これこそ永遠に続けばいいと思える時。