「照れてる男の人っていいわよね」
「いきなり何を言い出すかと思ったら……」
千迅は最大限の警戒心を持って彼女を眺めた。
「あ、身構えちゃだめよ。別に何もしないわ。ちょっと言ってみただけ」
「君の一言はたまに心臓に悪いよ」
千迅はふうと息をついている。
「俺は照れてる女の子の方がいいと思うがね」
「まあ。それってなんだか女の子と散々遊びまくってた男の言葉みたい」
「やめてくれよ。俺はそんなんじゃないって君が一番よく知ってるだろ。絵になるんなら照れた女の子の方が断然良いってことさ」
やたら早口になる千迅である。そんな彼が面白く千歳は笑みを浮かべた。
「それで、頬を染めた男をご所望かな」
「心当たりがあるの?」
「まあね。実はこの前……」
こそこそと、語りかける千迅はかなりの情報通である。
それというのも、千歳には彼女の興味がある新しい情報をもたらすのが、一番彼女の喜ぶことだと長年の付き合いを経て分かった故である。
もっとも。彼女に必要ない情報は排除した上で、彼はかなりの語り草を風の如く運んでいた。
そしてそれはこれからも続いていくことで。
しかし、千迅としては自分のことを言うよりかは、と。
そして、千歳としてはあなたのことを知りたいのに、と。
お互いに、すれ違う気持ちをそっと抱えながらも楽しく過ごしていくのである。