「どうしても駄目?」
じっと彼女の視線を見据えた。外させない瞳で。
千歳は、少し惑っていたが、やがて息をつく。
「いいわ。少しくらいなら」
「やった」
少しで終われないのだ。きっと。
「今夜は寝かさないよ」
「それはどうかしら」
秋の夜長に、ただ二人きりで。
千迅は尋常でない喜び具合だ。
それもそのはず。千迅は、千歳との時間が最近不足していたためだ。
無論、色っぽい話でもなく。
本当にただ日々のよしなしごとを語らうだけで、二人の空間は出来上がる。
「君の話は飽きないな」
「そう?こんな話あなたが聴いて面白いものかしら」
「本当だよ。それに、君が話すから楽しいのさ」
「不思議なひとね」
無邪気に笑い合う。いつも大人な雰囲気の、そんな時のふたりが一番子供っぽく見えて眺めるこちらもまた飽きない。