穏やかな時が流れ、ゆったりとした毎朝を迎えられることに、幸福感を感じながら。
忙しない日々とは無縁の日常を、丁寧に、丁寧に。
心が落ち着き、相手とのやり取りもちょうどよく。バランスが保たれている。
「こんなに穏やかなら、生き急ぐこともなかったわ。もっと肩の力を抜いても良かったのね」
「あなたはとくに、そうですね」
「あら、それはあなたの方が……」
私より、もっといつも頑張っているのに……と、彼女が呟くと、彼はただただ穏やかに振り向いた。
「日々の暮らしを丁寧に過ごせるのはよいことです。ただ、あなたは退屈に感じ始めないか少し気がかりですが……」
「まあ!私が落ち着きがないような言い方をしないでよ。私だって、平穏な日常を楽しめるわ」
「そうであることを祈りましょう」
「もう……ふふ」
少しからかいも込めた含み笑いをする彼に、彼女もまた穏やかな笑みをこぼした。