視界が開けて視えたもの

視界が開けて視えたもの

「それで、お前が噂の黒龍か?」

しんと静まりかえっていたその場の空気が一瞬にして変化し。

その姿を現した一匹の龍。

「気付いていたか。ならばそう早く申せ」

「しばらく泳がせておこうと思ったんだ。で、俺に何か用かい」

龍は、髭をゆらめかせながら、瞬きひとつせず答えた。

「そろそろ頃合いかと、迎えに来た」


次の道筋は何となく察していた五月雨は、目を閉じ笑みを浮かべた。

「それはいい。ちょうど、ここは飽きてきたところだ」

「では行くぞ」

激動の世も悪くはなかった、が、

これからは穏やかな日々も悪くない。

それこそが真の道に続いているかもしれないのだから。