「あなたもここまでですね」
男は勝ち誇った笑みを浮かべて、彼女の羽織りを掴み上げる。
いつも気難しい彼の顔は、女を捉まえて上機嫌だ。
彼女は彼の繊細な手つきを見つめて笑う。
そして懐の扇子を素早く突き出し、男の喉元近くを掠めた。
「あなたもこちらに来ない?きっといい相棒になれそう」
彼はすかさず笑い返して、羽織をぐっと引き付ける。
「それはこちらの台詞だ」
あの手この手で
君を あなたを
口説くとも
全てひとつなのだから
無用なことだと、言うまでもない。
(だからこれでよいのだと、誰かもまた笑うて呟いた)