「このような夜更けに、一人きりで何をお考えに?」
急に背後から声をかけられて振り向く。
その穏やかな声音に、少し安堵して、視線を落とした。
「ちょっと今までのことを思い返していたの」
周りではない、自分だから、全ては、だから、私も、きっと周囲に同じことを……
「自分が正しいと、そう、そのことばかり考えて、きっと、人知れず誰かを傷つけていたかもしれないと」
雪がちらついているのに、目がじんわりと暖かい。
「……」
彼は黙ったまま、私は、何となく背中に視線を感じている。
それが少し怖い。
「そう思いやれる心がある君なら、私はそれで良いと思っているよ。たとえ誰かが傷ついていても」
私の前に立ち、まだ残っていた紅葉を差し出され、穏やかに微笑む。
「その誰かも、きっと何かに気付く。なにひとつ無駄なことなど存在しないのだから」
あの時、あなたがくれた思い出だから。
今度は、じんわりと胸に広がる暖かさを感じていた。