ザザザッと暗い闇夜の木々の中を、走り抜けていく者がいた。
風を切るが如く、時折枝葉を切りながら進む。
「桃、君は俺の足に付いてこれるのか」
「ええ、だってあなたの龍ですもの」
自慢ではないが足は速い方だと認識していたため、これに付いてこれる彼女には感心した。
可愛らしい見た目に反して、鋭さを持つ彼女にだいぶ心を掴まれていた。
「さあ、次はどこへ行こうか」
「あなたのいく道ならどこへでも」
闇の中の道でも、君がいるならば。
俺は真っ直ぐに進んで行ける。
俺の月のような龍(ひと)。