元服後まもなくの姿で都から遠く離れた町をさまよう二つの影。
「このような恰好をするのは久しぶりね」
「お互い元服してから随分経ってしまいましたな」
「その言い方だと私たちがお年寄りみたいだわ」
娘は可笑しそうに控え目な笑みをたたえていた。
見た目は若いのに、中身は成熟した言葉を交わす二人。
そう人通りも多くないこの片田舎の町は、少し寂れた様子で、二人には合わない雰囲気だった。
「こういった場はなかなか慣れませんね。特にあなたもそうでしょう」
青年は手で自身の袴の土埃を祓いながら娘を見やる。
「いいえ、そうでもないわ。こういう下町もなかなか趣があって面白いじゃない」
「そういういついかなる場所でも楽しむところ、主譲りですか」
「いけない?」
楽しげに道を歩く彼女の瞳に様々なものが映り込み、何がそこまで楽しいのかと青年は少し呆れた様子で眺めていた。
「あなたとは、もっと落ち着いた場で書など楽しみたいものです」
「茶を嗜みながら?」
「ええ。あなたと一緒でなければ、どうしてこのようなところ……」
青年は慌てて咳払いをして町の外れの道筋へと視線をやった。
「ここはもういいです。早く次の町へ行きましょう」
「そう……」
「もっとあなたにも相応しい町がありましょう。ささ、急いで」
少々残念そうな彼女を促し、未踏の町へと歩を進めた。