しんと静まり返った雪道を、慣れた足取りで進む影がひとつ。
燃える情熱は内に秘め、より低い温度を保って求めて、自身のペースを守る。
「もう少し、冷たい方が。私には」
独り言ちて歩を進めるものの。
何かに後ろ髪を引かれるようで気が咎め、途中で止まりもし。
やはり引き返そうか、進もうか。
パキン。と音を立てて、割れた池氷から、走水が如く勢いよく流れ始めた。
「このまま、進むしかないようね」
じっとその様子を見つめていた娘が、さっと身を翻してその場を後にした。
より極めて氷が分厚く創り出された空間を求めて。