「山吹色は心を爽やかにしますね」
少女を抱き上げた青年が、晴れやかに口開く。
「本当?山吹色は他にもたくさんあるの。蜜柑に、南瓜、紅葉にも」
幼いながらも聡明な彼女に、青年は満足気に頷いた。
「ならば太陽も、山吹色としても良いでしょうか」
「太陽も?そうかしら……」
ふと空を見上げた彼女が、じっくり考え込み始めた。
「だって、朝日は白い……夕暮れは橙色……でも、赤色の印象もあります」
「夜は?」
少女は目を丸めた後、一瞬の青白さの瞳を放ち笑みを浮かべた。
「篠一さまは意地悪ね」
それはさながら月の如く、少女の真の正体を映し出していた。
「これは失敬」
目を細めて彼女を見据えた青年に、少女は再び穏やかな陽だまりの空間を放った。